第20回国際毛髪外科学会(ISHRS)での発表
第20回国際毛髪外科学会(International Society of Hair Restoration Surgery, ISHRS)が、2012年10月17~20日にバハマ諸島のNassauで開催されました。
今回の学会で、紀尾井町クリニックの柳生元院長は、ポスター2題の発表をおこないました。発表の演題は「High density implantation for secondary cicatricial (scarring) alopecia.」と「Atrial fibrillation and guidelines for perioperative antithrombotic therapy.」でした。「傷跡の脱毛に高密度での植毛を成功させる方法」と、「心房細動の不整脈がある症例で手術前後に抗凝固薬を調整するガイドライン」を解説した発表でした。
多くの参加者から、大変参考になったと感謝され、好評でした。
カリブ海・ナッソー
今年の国際毛髪外科学会(International Society of Hair Restoration Surgery, ISHRS)の年次学術集会はカリブ海の世界的リゾート、バハマ諸島のNassauにあるHotel Atlantisで開催されました。
1993年に第1回目の学術集会を開催したISHRSは、今回で第20回目の記念の学術集会をむかえ、2012年10月17~20日の間、BahamasのNassauにあるHotel Atlantisで開催されました。このホテルは、周囲をカリブの青い海と白い砂浜で囲まれた島の大部分を占める広大な敷地に5つの建物に分かれており、その間を巡回バスで移動する、大変大規模なホテルでした。各々趣向が異なるホテルの建物は、それぞれ単独でも大きな建物で、その間に、水族館やマリンスポーツ施設、ラグーン、専用ビーチ、カジノ、ショッピングセンターなどの設備が配置されており、ホテルの敷地全体で一つの街を形成する構造でした。
学会の会場は、ホテルの一つに隣接する広大な国際会議場の一部を使用して行われ、各会議室から学会会場まで長距離の回廊を巡って移動する毎日でした。
学会中は連日快晴の天気に恵まれ、プールや海で泳ぐ人たちがにぎわう横で、学会会場の建物内部は寒いくらいに冷房が効いていました。その中で、朝から夕方まで熱心な討論が繰り返されました。
その翌週、ハリケーン・サンディがバハマ諸島を通過するとは、だれも予想していませんでした。
トピックス
今回の学会では次のようなテーマが話題になりました。招請講演では、幹細胞から毛包形成の仕組み、毛髪再生と創傷治癒の関連、フィナステリドの副作用、などのテーマが取り上げられました。シンポジウムでは、長年の経験から得られた知識を現在の自毛植毛治療に生かすアドバイス、FUTとFUEの長所と短所、マーケティング法、などが議論されました。ワークショップでは、微量色素注入法、自毛植毛手術の器具の改良、男性型脱毛症に類似した皮膚病で自毛植毛手術が禁忌の疾患、などが解説されました。
その他には次のような話題が発表されました。保存液としてのWilliams E液、高齢者の毛髪径と密度と毛量、女性のヘアラインの下げ方、側頭部のヘアラインの後退、エピネフリンと手術後の脱毛、フィナステリドと性機能不全、フィナステリドの副作用と遺伝や生理や環境の影響、フィナステリドの長期成績、自毛植毛とフィナステリド治療、環境や食事や生活様式がホルモン調節と毛髪成長に及ぼす影響、FUE手技、SAFE法によるFUE、Cole式器具によるFUE、FUE法手術のスピード向上法、FUEによる多量の自毛植毛、FUE術後の発毛率、ロボットによるFUE、FUTとFUEの将来、FUTとFUEの組み合わせ法、不十分なドナー量での自毛植毛法、頭髪を使用したヒゲや胸毛などへの植毛、傷跡への自毛植毛、眉毛への自毛植毛、培養細胞による毛髪再生の最新知識、毛包の新生、胎児細胞分泌タンパクと成長因子の注入による毛髪再生、PG D2と男性型脱毛症、UBMとPRPによる眉毛脱毛症の治療、自毛植毛後の皮膚病による脱毛、化学薬品による瘢痕性脱毛、抗癌剤が原因の脱毛の予防と治療、脱毛治療とPRP注入、瘢痕性脱毛への高密度自毛植毛、ドナー傷の細小化、前頭部繊維性脱毛症と自毛植毛治療、自毛植毛後の神経再生と立毛筋の形成、心房細動症例での周術期の抗凝固剤の調節、など多様な内容の発表に対して、活発な議論が繰り返されました。