自毛植毛を行うにあたり、植毛デザインは非常に重要な要素です。薄毛でお悩みの方に自信を取り戻して欲しいという思いで長年にわたり治療を続けていますが、不自然な植毛デザインでは自信を取り戻せません。男性型脱毛症(AGA)の治療では薄毛の進行を前提として、現状の回復と合わせて、将来の見え方も考慮した植毛デザインが重要になります。ご希望、ご状況、植毛株数などを考慮して、無理をしない、自然な仕上りを目指すのが、紀尾井町クリニックの自毛植毛です。
生え際の植毛デザイン ~ おでこは最低7センチ
生え際は顔の印象に大きく影響し最も目立つ大事な場所ですから、既存毛にダメージを与えない間隔で可能な限り高い密度で移植します。生え際の位置と形は基本的に以前と同じで、産毛になって細く透けている範囲の密度を増加します。生え際の形を以前とは別の形にすると、顔のイメージが変わってしまうので、生え際の形は変えないで密度を増加すれば、違和感のない自然なイメージに仕上がります。
男性の生え際は年齢とともに後退して上がっていきます。もし若いときに生え際を低い位置で植毛してしまうと、将来年齢を重ねたときに、周囲の人の生え際は後退して上がっていますが、ご自身だけ低い位置の生え際で生涯過ごすことになり、周囲の人と顔の印象が合わなくなって、何となく年齢的に違和感のある顔つきになる可能性があります。
生え際の位置は、自毛植毛ではとても重要な内容です。眉毛の上から伸ばした直線上で、生え際の中央の位置を決めます。標準的な位置は、若い方では約7cmです。生え際の位置を低く下げたいというご希望があっても、6.5cm以下に下げることは稀です。
移植毛は生涯にわたって生え続けることが期待できるので、生え際を下げる場合には、慎重に決める必要があります。どうしても下げたい場合は、最初は以前と同じ位置に移植し、仕上がりを1年後に見ていただいた後で、生え際を下げる必要があるのかどうかをお決めになるのが良いと思います。生え際が同じ位置でも、ボリューム感が出て生え際が濃くなると、若々しい印象になります。
M字のバランスよりも大切なこと
生え際の後退は、AGAの初期症状の一つです。このとき、左右の生え際で、後退の速度や薄毛の程度に左右差が出来ることがよくあります。人間の体は左右が完全に対称ではありませんので、これは自然な現象といえます。
M字の左右差が気になる場合は、自毛植毛で修正できます。そのとき、忘れてならないことは、生え際の後退は、一時的ではなく将来も進行していくことです。例えば、生え際の左側のM字だけが薄くなった場合、この左側だけに植毛すると、今は一見バランスが取れたように見えますが、将来生え際全体がさらに後退したとき、移植毛のある左側だけが低い位置で残り、既存毛だけの右側が後退して、左右でバランスが逆転する可能性があります。
これを防ぐために、生え際の植毛では、全体のラインを作っておくことが大切です。前述の例では、右側のM字や中央部の密度は、左側のM字より低めでも構いません。植毛の密度は場所によっていろいろ調節することが可能です。ただし、将来生え際が後退したときのことを考えると、極端に左右差をつけたデザインで植毛することは、避けなければなりません。
限られたドナーを有効に活用
AGAでは年齢を重ねたときに前頭部から頭頂部までつながった広範囲の薄毛の形に進行していく可能性が高く、初期の段階では症状が出ていなくても、いずれ追加の移植が必要になる可能性を考慮しておく必要があります。最終的には前頭部から頭頂部までつながった形の植毛範囲になるように段階的に仕上げていきます。
前頭部から頭頂部までの広い範囲の植毛治療を考えた場合、限られた総数のドナー株(FUT最大6,000株ぐらい、FUE最大3,000株ぐらい)を生涯で有効に活用するためには、前頭部により多くのドナー株を移植して、頭頂部にはドナー株を少なめに移植します。前頭部と頭頂部の移植密度を変えても、変わらない定着率で移植毛は生えてきます。技術が確立したクリニックであれば、移植が原因となって既存の髪に永続的なダメージが残ることはありません。
このように、自毛植毛では将来を見据えて、限りあるドナー株をどのように活用していくのかを考えた上で、植毛デザインをする必要があります。カウンセリングでは、現状だけではなく、年齢とともにAGAが進行したときにドナー株が不足して困らないように、薄毛の進行を考慮して長期的な視野に立った総合的な治療プランをご説明します。