髪と亜鉛の関係【医師監修】
亜鉛は髪の毛の健康にとって必要となる様々な栄養素の中でも特に重要な役割を果たしている栄養素で、亜鉛が不足してしまうと薄毛や髪の毛の健康に悪影響を与えてしまう可能性があります。亜鉛は体内では合成されず、食事やサプリメントなど外部から摂取をする必要があります。この記事では、亜鉛と髪の毛の関係及び、特にAGA(Androgenetic Alopecia、男性型脱毛症)に対する効果についてご紹介させて頂きます。
亜鉛の役割
亜鉛は髪の毛に限らず体内で非常に重要な役割を果たしています。主な亜鉛の役割は下記の通りです。
細胞の機能正常化
亜鉛は多く体組織の生成に必要不可欠な栄養素です。亜鉛は体内の様々な化学反応を促進し、タンパク質、炭水化物、脂質などの栄養素の分解や代謝に使われます。これが不足すると体の様々な部分に影響が出ます。亜鉛が不足して起こる代表的な症状に「味覚障害」というものがありますが、これは舌にあって味覚を司る「味蕾細胞」の生成に亜鉛が必須だからです。他にも爪や皮膚、下記に詳しく記述しますが髪の毛の生成/成長にも亜鉛は必須となります。
免疫機能のサポート
亜鉛は免疫細胞の活性化や増殖を促進する重要な役割を果たしています。細菌やウイルスに対する免疫応答を強化します。また、亜鉛は抗炎症作用や抗酸化作用も持っており、体内の病原体に対する防御機能や細胞の老化予防をサポートします。
DNAの合成や安定
DNAは生物の遺伝情報を含む分子であり、細胞の成長、分裂、機能において不可欠な役割を果たしています。亜鉛はそのDNAの合成や安定に必要な栄養素で、健康なDNA機能を維持していくためには非常に重要な栄養素といえます。
ホルモンの合成やバランス維持
亜鉛はホルモンの合成や分泌、ホルモン受容体の活性化などに密接に関係しています。特に性ホルモンや甲状腺ホルモンの合成やバランスを維持する上で重要な役割を果たしています。
以上のように、亜鉛は体内で多くのプロセスに関与しています。いずれも身体の健康だけでなく髪の毛の健康においても重要で、亜鉛不足になると機能不全になり薄毛に繋がる可能性がございますので、亜鉛を適切に摂取するよう心掛けましょう。
亜鉛とAGAの関係
AGAは遺伝的な要因や男性ホルモンによって引き起こされる一般的な脱毛症の一つです。これにより、毛髪の成長周期の短縮が引き起こされ、髪が太く成長しきる前に抜け落ちて産毛に生え変わるようになり、徐々に頭髪が薄くなっていきます。もう少し詳しく説明しますと、男性ホルモンであるテストステロンが血液中に流れていますが、このうち毛包に運ばれたテストステロンが、5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素の働きでジヒドロテストステロン(以下DHT)という物質に変換されます。このDHTがアンドロゲン受容体に作用します。そしてDHTが結合したアンドロゲン受容体は髪の毛の周期を早めてしまい、毛髪の成長サイクルの乱れを引き起こしていった結果、薄毛となってしまうのです。
亜鉛の役割で挙げたように、亜鉛は酵素の正常機能やホルモンの合成やバランスにとって重要な役割を担っており、亜鉛の不足はテストステロンやDHTの代謝経路に影響を与え、AGAの進行を加速させてしまう可能性があると考えられています。さらに亜鉛は、髪の毛の構成成分であるケラチンの生成を助ける役割もあります。
また、亜鉛は頭皮の健康にとっても重要な栄養素の一つといえます。皮脂の分泌調整に関係しており、亜鉛の役割の「免疫機能のサポート」でもご紹介した通り、亜鉛は抗炎症作用や抗酸化作用を持っていますので、頭皮の炎症や酸化ストレスを抑える事をサポートします。
これらのことから、亜鉛欠乏状態の場合は亜鉛を摂取することでAGAの進行を抑えられる可能性があります。しかし亜鉛欠乏はAGA全体で見れば主要な原因とは言えないため、「亜鉛さえ摂取すればAGAが解決できる」といったような過度な期待はできません。
亜鉛の摂取方法
亜鉛を効果的に摂取するためには、バランスの取れた食事やサプリメントの使用が考えられます。食品としては、魚介類、肉類、ナッツ類、穀物などが挙げられます。また、亜鉛サプリメントによる摂取も選択肢の一つですが、過剰に摂取すると健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な量を摂取するよう心掛けておきましょう。
亜鉛が摂取できる食品をもう少し詳しく見ていくと下記の通りとなります。中でも魚介類の牡蠣(かき)は豊富な亜鉛が含まれることで知られています。
- 魚介類 ・・・ 牡蠣(かき)、ホタテ、うなぎ、しじみ、さんま、たらこ など
- 肉類 ・・・ 牛肉(赤身)、レバー(牛、豚、鶏)、鶏肉 など
- ナッツ類 ・・・ カシューナッツ、アーモンド、ピーナッツ など
- 穀物 ・・・ 米、大豆、ごま、オートミール など
亜鉛の過剰摂取
亜鉛不足は問題ですが、亜鉛の過剰摂取も問題です。適切な摂取量を守ることが重要です。亜鉛を過剰に摂取すると、銅・鉄欠乏症、消化器系・神経系の問題、免疫機能の低下等のリスクを高める可能性があります。亜鉛の必要量は年齢や性別によって異なりますが、だいたい1日10mgくらいあれば十分です。サプリメントで摂取する際の目安にしてください。
亜鉛は摂れば摂るほど髪が生える、というようなものではありません。過剰な摂取は逆効果となる可能性があります。適切な摂取量や方法を知るためにもAGAの治療や予防に亜鉛を使用する場合は、医師へ相談してみるのもよいでしょう。
まとめ
亜鉛は人体にとって重要な栄養素であり、髪の毛の健康にとってもとても大切な役割を担っています。バランスの良い食生活を心がけていれば亜鉛不足に陥ることはありませんが、過度なダイエットや上述したような食材を避けるようなバランスの悪い食生活の場合は不足することがあります。
亜鉛の不足は髪の毛の健康に負の影響を与えてしまう可能性がありますので、バランスの良い食事やサプリメントなどで適切な量を摂取するよう心掛けておきましょう(10mg/dayくらい)。亜鉛の過剰摂取は身体にとって有害ですので、摂り過ぎにも注意が必要です。 亜鉛の摂取は抜け毛の防止や薄毛の進行を遅延させることに寄与する可能性はありますが、亜鉛摂取のみでAGAが劇的に改善されるというような過度な期待は出来ません。
紀尾井町クリニックでは、AGA治療薬から植毛(FUT植毛、FUE植毛)までAGAの治療を取り扱っております。AGA・薄毛でお悩みの方は、お気軽にご相談下さい。
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太