AGA治療薬とは?その効果や副作用を解説【医師監修】

 AGA治療薬(エージーエーちりょうやく)は、AGAで悩む方々にとって重要な治療法として知られています。AGAによる薄毛や抜け毛は沢山の方々を悩ます問題です。しかし、近年ではAGA治療薬の発展により、この悩みを軽減する事が期待できる手段が増えてきました。本コラムでは、AGA治療薬の種類や効果、そして副作用について詳しく解説していきます。

AGA(男性型脱毛症)とは?

 まず、AGAについて簡単に説明します。AGAは男性型脱毛症を意味するAndrogenetic Alopeciaの略称で、男性の薄毛の原因において最も多い脱毛症となります。AGAは頭皮の特定の部位から毛髪の薄毛が進行することが特徴で、AGA発症後は加齢とともに進行し、より広範囲に広がる可能性があります。
 AGAのメカニズムを簡単に紹介すると、血液中に流れている男性ホルモンであるテストステロンが、5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素の働きでジヒドロテストステロン(以下DHT)という物質に変換されます。このDHTが毛包に分布する受容体(アンドロゲン受容体)に作用して髪の毛の周期を早めてしまい、太く成長しきる前に抜けてまた産毛に生え変わるサイクルへと変えてしまいます。この状態になった部位は太い毛が産毛へ置き変わっていくため、頭皮がだんだんと目立つようになってきて薄毛状態になってしまうのです。これがAGAの主な原因と考えられています。AGAについては、「AGA(男性型脱毛症)とは」にて詳しくご紹介していますので、興味のある方はご参照下さい。
 AGAは薄毛の原因となる脱毛症のひとつであり、様々な治療法がありますが、その中でもAGA治療薬は最もポピュラーな治療となります。

AGAの主な症状

 AGAは主に次のようなパターンで進行していきます。これらは進行の結果、それぞれの症状が合流して、より広い範囲の薄毛になる場合があります。

O字型脱毛(頭頂部)

 おでこが広がるように見える頭頂部(てっぺんのつむじ周辺)が円形に拡がっていき、進行していくパターン。

M字型脱毛(生え際)

 生え際の両脇の部分、いわゆるM字部分から徐々に頭頂部方向に脱毛が進行していくパターン。

U字型脱毛(前頭部)

 額全体が徐々に広がっていく形で薄毛が進行するパターン。

AGA治療薬の種類

 AGA治療薬は大きく分けて、内服薬と外用薬の2種類に分かれます。それぞれの薬には異なる成分と効果があります。AGA治療薬には様々なものがありますが、ここでは代表的な3つのAGA治療薬をご紹介します。

内服薬

フィナステリド

 フィナステリドは、DHTの生成を抑制することでAGAの進行を防ぐ内服薬です。フィナステリドは、5α還元酵素の働きを抑制することで、テストステロンがDHTに変換されるのを防ぎます。これにより、毛包がDHTの影響を受けにくくなり、脱毛が抑制されます。
※「フィナステリドの効果と副作用」にて詳細をご紹介していますので、興味のある方はご参照下さい

デュタステリド

 デュタステリドもフィナステリドと同様に5α還元酵素を抑制しますが、フィナステリドよりも強力にDHTの生成を抑える効果があります。デュタステリドは、フィナステリドに比べて広範囲の5α還元酵素を抑制するため、より強力な効果が期待できます(フィナステリドはⅡ型のみを抑えるのに対して、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を抑える)。
※「デュタステリドの効果と副作用」にて詳細をご紹介していますので、興味のある方はご参照下さい

外用薬

ミノキシジル

 ミノキシジルは、頭皮に直接塗布する外用薬で、血行を促進することで毛包を活性化し、発毛を促進する効果が期待できます。ミノキシジルは、もともとは高血圧の治療薬として使用されていましたが、発毛効果が発見され、現在ではAGA治療薬として広く用いられています。
※「ミノキシジルの効果と副作用」にて詳細をご紹介していますので、興味のある方はご参照下さい

AGA治療薬の効果

 いずれのAGA治療薬も効果には個人差があり、使用を開始してから6ヶ月以上は経過を見て頂く必要があります。そして効果を持続させるためには、継続的な使用が必要となり、使用を中止してしまうと、「薬を使用しなかった状態」(薬による髪の維持がリセットされる)に戻ってしまいますので、注意が必要です。

フィナステリドの効果

 フィナステリドの効果は、AGAの進行を遅らせたり、細くなってしまった髪の毛を少し太くするなどの効果が期待できます。フィナステリドは、特に頭頂部の薄毛に効果的とされています。なお、飲み始めてすぐの期間は、毛周期がリセットされて脱毛が増えてしまう「初期脱毛」という現象が起こる可能性がありますが、これは内服継続していくことで戻ってきます。

デュタステリドの効果

 デュタステリドは、フィナステリドと同様に、AGAの進行を遅らせたり、細くなってしまった髪の毛を少し太くするなどの効果が期待できます。デュタステリドは、フィナステリドよりも幅広い範囲で5α還元酵素を抑制(デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方、フィナステリドはⅡ型のみを抑える)するため、より強力な効果が期待できます。こちらも「初期脱毛」が起こる可能性があります。

ミノキシジルの効果

 ミノキシジルは、頭皮に塗布して使用しますが、血管拡張作用により頭皮の血流を促進して、毛乳頭細胞へより多くの栄養素や酸素を運ぶことで、髪の毛を太くしたり、薄毛の進行を遅らせたり、抜け毛を減らす効果などが期待でます。特に、ミノキシジルは頭頂部の薄毛に効果的とされています。こちらも「初期脱毛」が起こる可能性があります。

AGA治療薬の副作用

 それぞれのAGA治療薬の代表的な副作用は以下の通りです。副作用は必ず全ての方に現れるわけではありませんし、重篤な副作用が現れることも稀ではありますが、もし以下の症状が出るようであれば医師へ相談するようにしましょう。

フィナステリドの副作用

男性機能の変化

 フィナステリドを服用することで、DHTの発生を抑制した結果、性欲の低下(リビドー減退)、勃起障害(ED)、射精障害などが起こる場合があります。

乳房の肥大化や痛み

 乳房肥大や乳房圧痛など、乳房組織の増殖により女性化乳房の症状が現れる場合があります。

肝機能障害

 肝酵素(AST、ALTなど)の上昇や黄疸(皮膚や白目の黄変)、肝不全などが起こる場合があります。

アレルギー

 フィナステリドに限らず薬は身体に合わないという場合があります。発疹、かゆみ、蕁麻疹、顔面腫脹などの症状、重篤な反応として、呼吸困難や喉頭浮腫などがありますが、非常にまれです。

PSAを低下させる

 前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の数値に影響を与えます。人間ドックや健康診断などでPSA測定する場合は、必ず申告して下さい。

経皮的に吸収される

 男性ホルモンに影響を与える薬ですので、胎児や乳幼児が触れると性器の分化に影響を及ぼす可能性があります。触るだけで若干ですが成分が体内に取り込まれますので、妊産婦の女性の方やお子様は直接触れないよう十分注意下さい。

デュタステリドの副作用

 デュタステリドの副作用もフィナステリドとほぼ同じです。こちらは5α還元酵素のⅠ型、Ⅱ型を両方阻害することから、副作用の頻度がフィナステリドに比べて若干ですが高くなります。

ミノキシジルの副作用

頭皮の発疹・発赤、痒み、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感など

 これらは血流の増加によって起こる症状です。また、かゆみや頭皮の乾燥を感じることもあります。

頭痛、めまいなど

 血管拡張作用による血圧の変動や血流変化によって、これ等を感じる場合があります。

心拍数の増加、胸の痛みなど

 血管拡張作用により、血圧が低下するため、交感神経は心拍数を増加させ、血圧を維持しようとした結果、これ等を感じる場合があります。

浮腫み、体重増加など

 血管拡張作用によって、体内の液体が血管から組織や皮下組織に移動しやすくなった結果、これ等を引き起こす場合があります。

AGA治療薬の選び方

 AGA治療薬の選び方は、個々の症状や体質、ライフスタイルによって異なります。以下に、治療薬を選ぶ際のポイントを挙げます。

医師の診断

 まずは専門の医師の診断を受けます。自身の状態を把握して、医師の処方が必要なAGA治療薬も選択肢に入れる事ができます。

症状の程度

 AGAの進行度に応じて、適切な治療薬を選ぶことが重要です。軽度の薄毛であれば、ミノキシジルだけでも効果が得られる場合がありますが、進行が進んでいる場合は、フィナステリドやデュタステリドの処方や併用も視野に入ってきます。

副作用のリスク

 副作用が心配な場合は、医師と相談しながら治療薬を選ぶことが重要です。特に持病をお持ちの方や常時お薬を飲まれている方などは、慎重に選択する必要があります。

費用

 AGA治療薬は、使用をやめてしまうと、その効果も止まってしまうため、使い続ける必要があります。そのため、持続可能な費用のものを選ぶ必要があります。中にはジェネリックのAGA治療薬もあるので、継続使用を考慮した治療薬を選ぶようにしましょう。

まとめ

 AGA治療薬は、薄毛や抜け毛の悩みを軽減するための重要な治療法の一つです。フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなど、それぞれの薬には異なる成分と効果がありますが、適切に使用することで高い効果が期待できます。しかし、副作用のリスクもあるため、使用前には医師と十分に相談し、自分に合った治療薬を選ぶことが大切です。継続的な治療と適切なケアを行うことで、AGAの進行を抑え、健康な髪を取り戻す手助けとなるでしょう。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックは、国内で数少ないFUTとFUEの両方に対応できるクリニックです。経験豊富な医師が直接相談を承った上で、お悩みに寄り添って一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太