移植毛の定着について(MOTOさんの投稿)

よく植毛によって移植された毛髪は生涯、移植された箇所で生え続けるという話を耳にしますが、これはあくまでも"生涯抜けずに生え続ける性質をもった毛髪"に限ってはという条件付きですよね?
移植される毛髪にはそういった性質を持っていないものも含まれると思われるだけに、移植毛全てが生涯抜けずに生え続けるということではないですよね?

と申しますのも、ドナーとなる後頭部の毛髪も禿げたりはしないまでも、加齢に伴ない細くなったり、抜けたりするため、これにより10代や20代のときより、30代、40代となるにつれて後頭部の毛髪の密度自体が低くなるのが実情で、このような性質をもった毛髪をドナーとして利用する以上、植毛した毛髪の全てが生涯に渡って生え続けるというのはどうみても理に適わないと感じるからです。
特に、後頭部の毛髪の密度が高いと思われる20代のときに植毛した毛髪なんかの場合、先述したような加齢に伴なう変化により、個人差はあれどその後抜け落ちてしまう割合が相応に高くなってしまうことも考えられるかと思うのですがいかがでしょうか?

MOTO

お返事

MOTO様へのお返事

かなり高度な内容のご質問です。
ご質問の内容には単なる思い込みで事実とは違う部分と、ある程度事実に近い内容とが含まれています。

まず、ヒトの頭髪は2種類の違う毛髪で構成されています。毛根細胞に5 alpha reductaseという酵素を含んだ毛根と、含まない毛根の2種類です。前者は前頭部から中央部〜頭頂部に分布しており、後者は左右の側頭部から後頭部に分布しています。後頭部から採取したドナー毛根には5 alpha reductaseが含まれていないので、男性ホルモンのtestosteroneが流れてきてもdihydrotestosterone (DHT)を作ることはなく、太い終毛がうぶ毛にならないのです。
さらにドナードミナントという特徴があり、移植された毛は新しい場所の影響を受けずにもともとの後頭部の髪の特徴を生涯持ち続けるのです。ですから、後頭部に髪がある限り、前頭部に移植された移植毛も後頭部の髪と同じように生え続けます。
この二つの医学的事実が、自毛植毛の理論的根拠です。

次に、年齢による変化についてご説明します。
医学論文のデータによると、髪の太さは頭の場所で違いますが、後頭部から側頭部の髪の直径は若年者で83-87ミクロン、高齢者で81-82ミクロンです。
後頭部から側頭部の頭髪の中のうぶ毛の比率は若年者で3-11%、高齢者で3-12%です。
毛包単位follicular unit (FU)の構成について、後頭部から側頭部の髪の中の2−3本毛のFUの割合は若年者で55-67%、高齢者で53-73%です。
これらの医学論文のデータから分かるように、後頭部から側頭部の髪の太さや本数は高齢者になっても若年者とほとんど変らないのです。
当院でも多数のお客様の頭髪の太さや本数のデータがありますが同様の結果です。

毛根細胞や毛髪にも加齢変化は避けられません。後頭部の髪質が年齢とともに変化したり白髪が増えたりした場合、前頭部に移植された髪も同じように変化して白髪が増えていきます。その意味で、頭髪全体の髪質や色調はいつもバランスが保たれていきます。この点からも、自毛植毛が理想的な薄毛の治療であると言えます。

医師 柳生

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