お願いします(幸村さんの投稿)

QHRについてお聞かせ下さい。メスは一切使わないとか、株分けも移植も人の手を使わないとかいろいろ言われてますが、実際の所どうなんでしょう?専門家のご意見を是非お聞かせ下さい。お願いします。

幸村

お返事

幸村様へのお返事

メスを使わないドナー採取方法はFUEと呼ばれており、これは直径1−2mm程度で頭皮を毛根ごとくり抜く方法です。10年以上前に盛んに行われていたパンチグラフト(直径4mm程度)の変法です。メスは使用しませんが、くり抜いた傷痕は放置するのでドナー採取部位には米粒大の傷跡がくり抜いた数だけ残ります。狭い範囲内から多量のくり抜きを行うと傷痕が目立ちやすいので広くあちこちからくり抜きます。あちこちからとは言え、ドナー採取部位は限られており、結果的に大量のドナー採取を複数回行うことは難しい手法です。FUEはドナー採取量が少なく済むような移植ケースで行えます。また、メスでドナーを採取する場合はオープンテクニックと言われ拡大鏡で毛根部を確認しながら採取できますが、くり抜きは頭皮内にある毛根部を確認できないので毛根部に与えるダメージが大きくなることがあります。ドナー採取部位に残る傷痕については、一本の縫合傷か多数の米粒大のくり抜き痕の違いになります。

株分けについては、ヘアートーム(オムニグラフトの株分け部分)と呼ばれています。これは一定の間隔(1−2mm)で数十枚の刃をセットし、メスで採取したドナーを数十枚の刃の上に置き、上から圧して株分けする方法です。刃の枚数分の株を一度に切ることができますが、ヘアートームの刃が一定の間隔に設定されるのに対し、自然に生えているドナー頭髪の毛根の間隔は一定でなく、機械的に株分けすると毛根に与える損傷が大きくなり、結果的にドナーロスにつながることがあります。

オムニグラフトの植え込み部分の穴については電動吸引パンチ方式(ハンドピースと呼ばれるオムニグラフトの穴あけ部分)で直径1mm程度で頭皮をくり抜きます。くり抜いた株等を空気圧を利用してチューブに吸い込み、前述のハンドピースでくり抜いた穴に圧入(オムニグラフトの移植部分)します。この場合、移植株が大きく、移植する穴も大きいので生え際などの仕上がりにおいて自然さに欠けることやデンスパッキング(高密度移植)が難しい手法です。

FUEについては一昔前のパンチグラフトの変法として比較的新しい手法といえますが、オムニグラフトについては7−8年前に考案された機械であり、自毛植毛専門医達から良い評価は得られませんでした。オムニグラフトを新しい機械とお考えの方が多いようですが、新しい機械ではありません。(少し改良されたようですが、基本的には同じ構造です。)

どんな方法にも必ず利点や欠点があります。人の熟練を必要とする自毛植毛術を半自動化させたオムニグラフトは、ある意味ではとても優れた機械といえますが、ドナーロスを含めて仕上がりの自然さや高密度移植など質の高い自毛植毛術を提供するには、難点の多い機械です。

最近になって日本でも自毛植毛のニーズが高まり、医療施設のPR競争が始まっており、一般の方が広告記事やHPの内容から移植方法の良し悪しを判断することはとても難しいことと思います。

紀尾井町では、お客様のご希望があればヘアートームを用いた株分け(modified omnigraft)やメスを用いないFUEも行えますのでお気軽にご相談ください。

私自身が移植を受ける場合、現時点では間違いなく熟練した手作業による株分けと移植を選びます。

医師 林

前の記事
鋪榛ン
次の記事
毛髪培養(高橋さんの投稿)