第11回ヨーロッパ毛髪外科学会(ESHRS)のご報告
第11回ヨーロッパ毛髪外科学会(ESHRS)およびライブ手術ワークショップの第11回学術総会が2008年5月29日~6月1日、スペインのマドリッドで開催されました。
今回はMadridで最も格式の高いHotel Ritzを会場に、熱心な研究発表と活発な討論が行われました。
学会発表
紀尾井町グループの柳生元院長の研究発表の演題は”Treatment of Alopecia after Artificial Hair Implants”でした。この発表は、学会会長や理事をはじめ聴衆の多くの医師たちに大変好評でした。
「すばらしい内容の治療成績だ」(学会会長、スペインVila Rovira博士)、「今後治療困難な症例に出会ったら東京の紀尾井町クリニックにぜひ紹介したい」(オーストラリアNaidu博士)、「毎年すばらしい発表をしてくれるが今回もすばらしい研究発表だった」(元会長、ドイツNeidel博士)、「ぜひ他のもっと大勢の医師にも広めて欲しい」(前会長フランスFrechet博士)など、たくさんの賛辞が寄せられました。
ライブ手術の座長
5月30日におこなわれたライブ手術のセッションで、柳生元院長が司会の一人に指名され、座長を担当しました。
手術室でおこなわれている模範手術がリアルタイムに中継されて、講演会場の大スクリーンに映写され、世界各国の大勢の植毛専門医が講演会場にいながらにして同時進行で現在おこなわれている手術技術の微妙な細部を拡大映像でながめて、手術のテクニックを学ぶという趣向です。このとき、術者に代わって、現在行われている手術操作を解説したり、手術テクニックの細部を補足説明して追加し、会場の聴衆からの疑問点や質問を手術中の術者に伝えて答えてもらうというのが、司会の役割です。緊張のもとでの大変名誉な大役でした。
話題
今回の学会でのトピックは、ドナー部の傷が目立たないMinimal or invisible scar縫合法、FUE法、女性の生え際のデザイン、側頭部の生え際のデザイン、Frechet Extender法、Frechet3フラップ法、FUE法によるメガセッション、男性型脱毛症の遺伝子診断、Trichophytic closure術後の合併症、高密度植毛後の合併症、頭皮の解剖学、立毛筋の組織学的研究、植毛手術後の傷跡の修正、過去の植毛手術後の傷跡の修正などが話題になりました。
近年広く行われている毛包単位ごとの植毛(FUT法)では、すべての株を1~2本毛の毛包単位(follicular unit)に分ける際に移植株の毛根組織のダメージが起きやすく、移植毛の発毛率(定着率)が70~90%と低くなるという内容の発表がありました。これは以前からいろんな学会で多くの植毛専門医から指摘されてきたことです。また、double follicular株やtriple follicular株を多用すると、発毛率が90~100%以上と良くなることは、以前から多くの学会発表で指摘されています。この点については、これまでに国際毛髪外科学会(ISHRS)でも同様の内容で多くの発表がおこなわれています。植毛界の世界的権威であるW. Unger博士やR. Shapiro博士は、FUT法にダブルフォリキュラー株やトリプルフォリキュラー株を併用したほうが、密度やボリュームを出すのに効果的だと以前から国際毛髪外科学会で何度も発表しています。今回もこの説を裏付ける意見でした。
このFUT法にダブルフォリキュラー株を併用する植毛方法は、まさに、紀尾井町クリニックが従来おこなってきたNHT式自毛植毛そのものと同じ手術方法になります。紀尾井町グループでは、これまでにNHT式自毛植毛法で優れた結果を出してきましたが、それと同じ内容の手術方法が、 国際学会でも世界的権威の植毛専門医たちにより推奨されていることになります。
ライブ手術では、FUE法、Frechet Extenderによる頭皮の伸展方法、Frechet 3フラップ法、Minimal or invisible scar法、FUTと顕微鏡下での株分け、男性女性の生え際のデザイン、側頭部の生え際のデザイン、毛根を傷つけないドナー採取方法、ドナー縫合方法の工夫、などの内容で多数の手術が実演されました。