第18回国際毛髪外科学会(ISHRS)での講演
第18回国際毛髪外科学会(ISHRS)のワークショップで講演しました。
2010年10月21日早朝のワークショップ「Painless Anesthesia Technique(無痛麻酔技術)」で講師に指名され、講演しました。演題は「Perioperative Control of Beta Blocker: Management of Cardiovascular Disease in Hair Restoration Surgery」でした。これは、ワークショップの責任者Steven Chang博士に依頼された内容の講演で、植毛手術の前に循環器系の薬を調節する最新の基準を示したものです。
循環器系の病気の薬剤治療は、近年その考え方が変化して、いろんな内服薬の調節基準も、大きく変わってきています。昔は一般的だった調節方法も、今では違う考え方に変わっている事柄がいくつかあります。しかし、内容が専門的すぎるので、一般の医師の大部分は最近の状況を知らず、以前の治療指針に従っている医師がいまだに多いのが実情です。それらの点を具体的に指摘して、最新の情報を具体的にまとめて解説する講演を、今回Chang博士から依頼されたのです。
循環器系薬剤のなかでも調節が難しいベータ遮断薬を中心に、血小板凝集抑制薬の調節方法も含めて、アメリカ心臓病学会の最新のガイドラインに基づいて、最近の標準的な対応方法を解説しました。心臓血管外科手術の第一線で長年活躍した実績があり、循環器専門医の資格をもつ柳生元院長ならではの、実際の経験に基づく発表でした。
循環器系の薬剤を使いこなすには、正しい知識と、長年の使用経験が必要です。しかし、植毛医は皮膚科や形成外科出身の医師が大部分なので、循環器疾患をもつ患者さんたちを敬遠しがちです。循環器の病気がある患者さんたちでも植毛手術を安全におこなうためには、手術前から総合的な治療戦略をたてて、より安全性が高い対応をしておことが重要です。その結果、困難な状況を未然に予防できる可能性が高くなるのです。そのための安全な対応方法を解説したものが、今回の講演内容でした。
発表後に、聴衆から数々の感謝と賞賛が寄せられました。
「とても参考になった。自分のクリニックでこれまで続けてきた治療基準を今後改めることにする。」
(元ISHRS会長 Robert Leonard博士/ロードアイランド)
「今日の講演を楽しみにしていた。今年5月のイタリア学会でのドクター柳生の発表内容は、すでに自分のクリニックに取り入れて、治療に実践している。今回の内容も、ぜひ自分のクリニックに取り入れたい」
(Peter Nyberg博士/チューリッヒ)
「この発表内容を、われわれ皮膚科出身の一般の植毛医にも広めて欲しい。」
(Peter Ndjadi Yela博士/ブリュッセル)
「今後も循環器に関する有益な話題を、いろいろ講演してほしい。」
(Vance Elliott博士/カナダ)
など、さまざまな感想や意見が寄せられました。
ボストン
第18回国際毛髪外科学会(ISHRS: International Society of Hair Restoration Surgery)がアメリカ東海岸北部の都市Bostonで10月20日~24日の5日間開催されました。アメリカ独立の歴史が始まり、最も古い街の1つであるBoston市は、アメリカで最初の大学Harvardが1636年に創立された街でもあります。落ち着いた由緒ある町並みと、学生街の雰囲気を残しながら、近代的な高層ビルが立ち並ぶBostonは、すでに秋が深まり、風が冷たくコートが必要でした。
Boston港近くにあるWorld Trade Centerの広い会場で今年のISHRS学会が開催されました。今年はISHRSで過去最大数の演題申し込みがあり、参加した医師数も過去最大数の盛況で、医療従事者、植毛外科医、皮膚科医、基礎的研究者など総勢600人以上が参加しました。
「革新と進化:毛髪回復治療の進歩;革新的発想と技術の進展」というテーマで開催された学会では、最近の話題や基礎的研究の成果が発表され、学術情報や植毛技術の工夫などの様々な情報が交換されました。
トピックス
主な話題は、基礎的研究の最近の進歩情報 ・ 脱毛の薬剤治療の新局面 ・ 創傷治癒因子と植毛効果 ・ 毛包細胞の機能と再生 ・ 胚性繊維芽細胞分泌蛋白による移植株の保存と育毛効果 ・ 新しい発毛剤 ・ 自己血由来血小板(PRP)の育毛効果 ・ 移植株の低温保存法 ・ 新しい保存液による株の4日間保存 ・ 男性ホルモンに拠らない脱毛 ・ 加齢による脱毛 ・ 瘢痕への移植 ・ 珍しい症例 ・ 植毛での新技術 ・ 毛髪生理学の進歩 ・ 遺伝子と脱毛 ・ 成長因子と頭髪の成長 ・ 毛髪の成長と白髪化 ・ ドナー部創痕の修正 ・ 頭皮の弾力性と創痕 ・ 毛包のEstrone活性と女性型脱毛 ・ 女性の頭皮でのAndrogen受容体遺伝子とfinasterideへの反応 ・ Prolactinと毛髪の成長 ・ 多のう胞卵巣と女性型脱毛 ・ finasterideによる女性型脱毛の治療効果 ・ レーザー刺激による男性型脱毛の治療効果 ・ メガセッション ・ 高密度植毛 ・ 移植困難症例 ・ まつ毛と眉毛の植毛 ・ 植毛技術の工夫、など多方面の内容の発表がおこなわれました。