頭頂部への植毛は難しい?【医師監修】

 当院にて時々「頭頂部への植毛は難しいのですか?」「頭頂部の植毛は止めた方がいいですか?」というような質問をなさる方がいらっしゃいます。なぜその様な疑問をお持ちになったのか、また、頭頂部への植毛の難易度・特徴などをご紹介いたします。頭頂部の薄毛でお悩みの方も多くいらっしゃるかと思いますので、1つの参考にしていただけますと幸いです。

頭頂部への植毛の特徴と難しさ

頭頂部の血流

 頭頂部は他の部位と比べて血流が少ない傾向があるため、移植した毛が定着する為にも注意が必要です。血流は毛根に栄養と酸素を供給する重要な役割を担っており、これが不足すると移植した毛が生着しにくくなります。このため、極端に高密度で移植してしまうと生着率が落ちてしまう可能性があります。特に普段の血圧が低めの方は頭頂部まで血流が届きにくいので注意が必要です。

毛の方向と角度

 頭頂部の毛髪は、他の部分に比べて生え方が複雑です。所謂つむじを中心に放射状かつ渦を巻くように広がりながら、さまざまな方向に生えています。このため、自然な見た目を再現するには、高度な技術と精密な施術が求められます。毛の方向性と植えこむ角度などを正確に再現しないと、不自然な仕上がりになってしまいます。

ドナー株の限度

 植毛に使用する移植毛は、後頭部や側頭部から採取されます。採取されるドナー株(移植株)は、植毛方法によって違っており、FUT植毛では生涯で約5,000~7,000株、FUE植毛では生涯で約2,000~3,000株です。言い方を変えると、生涯で移植できる株数には限界があるという事です。
 広範囲にわたる薄毛や今後AGAなどで薄毛が進行した場合、カバーする範囲によっては、ドナー株が不足する場合があるため、将来も見据えて限りある資源をどう有効活用をするか慎重に考慮する必要がありますし、「今」だけではなく、10~30年後も考慮したデザインも重要となります。

頭頂部への植毛の効果を感じないと思ってしまう理由

 この様に頭頂部への植毛は注意をする点があり、他の部位とはまた違ったノウハウが必要となりますが、頭頂部への植毛をお受けになった方で効果をあまり感じないという方もいらっしゃいます。なぜそのようにお感じになるのかを幾つか例を挙げて見ていきましょう。これらが「頭頂部への植毛は難しい」というイメージを持たれる一因なのではないかと思われます。

移植技術の影響

 前項でご紹介した通り、頭頂部への植毛は、他の部位に比べると難易度としては比較的難しいと言えます。そのため、密度や角度と方向、植えこむ移植株、植えこむ技術等によって大きく差が生じます。経験・技術によっては、定着率が低くなってしまったり、不自然な仕上がりとなってしまう可能性もあります。また、植毛デザインにおいても、将来を見越して不自然にならないデザインが求められます。極端な例では、今現在つむじが薄いからといって、そこだけを集中的に円状に濃くするよう植毛してしまうと、将来的にその部分だけ残して周辺が薄くなっていくという不自然な状況が生まれてしまいます。こちらは、植毛全般においてもいえる事となります。

体質・状況による影響

 移植した毛髪が定着する前に、帽子やヘルメット等をかぶってこすれてしまったり、ごしごしと頭を洗ったり、無意識にひっかいてしまったりという場合、移植毛が定着前に抜けてしまう可能性があります。また、移植毛が細かったり、白髪だったりする場合は、移植先でもその性質を受け継ぐため、しっかりと生えて伸びてきたとしても、黒々とした太い毛髪に比べると効果を感じにくいという傾向があります。こちらも頭頂部に限らず、植毛全般において言える理由となります。

植毛する方向の影響

 特に頭頂部の植毛において、効果を感じにくいと思われる理由は、この植毛方向による影響が考えられます。前頭部は似た向きに植毛されることがほとんどですが、頭頂部は放射状に散らされて植毛されるため、髪の毛が重なり合う範囲が前頭部に比べて少なくなります。そのため、頭頂部は前頭部に比べると重なり合いが期待できず、地肌が見えやすい状態となるため、しっかりと生えて来ていたとしても効果を感じにくいという傾向があります

採取方法よる影響

 植毛には、大きくFUT植毛とFUE植毛という2つの方法があります。植毛は自身のAGAに強い性質を持つ髪を移植する方法で、生涯に移植できる株数には限界がありますが、これはドナー株の採取方法によっても大きく差が出てきます。FUT植毛では生涯で約5,000~7,000株程度FUE植毛では生涯で約2,000~3,000株程度とおよそ2倍ほどの差があります。そのため、先に前頭部の植毛をしていた場合や、前頭部から頭頂部までの広い範囲で植毛を行う場合など、採取する株数を多く求められる場合は、術式によっては数を賄いきれない場合が生じてきますので、ご要望に適した術式を選ぶ必要があります

効果の実感のしやすさ

 生え際の植毛の効果は鏡で見れば一目瞭然で効果が実感できるため、満足度が高くなりやすい傾向にあります。一方、頭頂部の状態というのは合わせ鏡で見て頂いたり写真で比較してもらう必要がありますが、生え際に比べれば見る頻度の低い部分ですので、一旦生え揃ってしまうと「移植前の自分の状態」を忘れてしまい満足感を得にくいことがあります。このため、手術をする前の状態の画像を御自身で撮影し、保管して後で比較できるようにしておいた方が良いかと思います。

頭頂部への植毛で失敗しないために

 頭頂部への植毛において失敗をしない為には、どのような事に気を付けておくべきなのでしょうか。注意すべき点を見ていきましょう。なお、別コラムの「植毛で失敗しないための5つのポイント」では植毛で失敗しないポイントをご紹介させて頂いておりますので、興味のある方は参考までに併せてご確認ください。これらを考慮した上で、極力複数のクリニックにご相談をして頂き、ご自身の状況やご希望に合うクリニックをお探しになる事をお勧めします。

経験豊富なクリニック(医師・看護師含む)を選ぶ

 植毛手術は、医師のみではなく看護師を含めたチーム医療であり、いずれか一方だけの技量や経験だけではなく、各々の技量や経験値が結果を左右すると言っても過言ではありません。頭頂部の植毛は比較的難易度が高いと言えますので、医師や看護師の経験を必ず確認しておきましょう。また、技術面だけではなく、将来を見据えた植毛デザインでも経験や積重ねた実績(数や年数)が深く関わってきますので、しっかりと将来を見越した植毛デザインのノウハウを持つ医師(クリニック)に相談するようにしましょう
 なお、植毛手術には、大きくFUE植毛(follicular unit extraction)とFUT植毛(follicular unit transplantation)の2種類ありますが、どちらが優れているということではなくFUEは比較的少ない移植数、FUTは多い移植数にとケースによって向き不向きがあります(生涯の採取数目安として、FUT植毛では約5,000~7,000株、FUE植毛では約2,000~3,000株)。前頭部から頭頂部、広い範囲の頭頂部など、多くの移植株を必要とする可能性がある場合は、まずは両方の植毛方法を扱っているクリニックで相談をされることをおすすめします

医師との相談をしっかり行う

 通常はお悩みを医師に直接相談して、症状を診断してもらい、その結果やご希望に応じて治療計画が立てられます。そして医師から植毛のメリット・デメリットはもちろん、副作用やリスクなどもしっかりと説明を受け、理解・納得をされた上でご自身によって手術を決定するよう心掛けましょう。この際に部位によって効果の感じ方に差がある可能性がある点なども説明もされますし、限りある資源(移植毛)を何処にどういった配分で移植していくのか等の話もあるかと思います。もし不明な点や更に説明が必要な点があったら理解・納得できるまで遠慮せずに何度でも相談するようにしましょう。また、FUT植毛とFUE植毛では生涯の採取株数が違いますので、将来も見据えて、自身の場合はどちらが良いのかを相談しておきましょう。なお、どちらの方法でも傷痕は必ず残ります(FUTは細い線状痕、FUEは採取した数分の米粒大の傷痕)ので、採取された傷の症例も複数見ておくようにしましょう

アフターフォローの確認

 植毛は手術が終わった後も重要です。自毛植毛は効果を実感するまでにはおよそ1年程度かかります。術後に注意点や過ごし方などが伝えられますが、言われた通りに過ごしていても、体質や状況によっては副作用やリスクが起きてしまう可能性があります。また、ぶつけてしまった、引っ搔いてしまった、定着していないのではないか?、生えないのではないか?、かゆい、傷痕が気になる、等、心配になってしまう場合は、遠慮をせずに都度手術をしたクリニックに気軽に相談をしましょう。

期待できる効果を確認・認識する

 

 植毛は、自身のAGAに比較的耐性のある髪の毛を、薄い部分に移植する治療法となるため、自身の髪の毛の総量を越えて移植することは出来ません。つまり生涯で移植できる髪の数には限界があるということです。特に広い範囲で薄毛が目立つ場合は、全ての範囲を植毛で高密度にできない場合があります。例えば、前頭部と頭頂部の薄毛が気になる方に対して植毛する際、見た目的に効果を感じやすい前頭部を中心に採取した移植毛を配分を行ったとします。その結果、頭頂部は前頭部に比べて少ない配分になり、更に広域に対して方向を放射状にして移植していきますので、重なりや奥行きが前頭部に比べて取れないため、効果をあまり感じて頂けない可能性があります。
 また、移植する毛髪は、基本的には採取した髪の毛の性質をそのまま受け継ぎますので、細い毛は細い毛に、白髪は白髪で生えてきます。同じ1000株でも太くて黒々とした毛髪とこれ等では、後者の方がボリュームが少なく見えてしまう可能性が高いと言えます
 なお、移植毛はAGAの影響を受けにくいため生涯生え続ける事が期待できますが、既存毛はAGAの影響を受けます。このため、もしAGAが進行して既存毛が抜けてしまうと移植毛のみが残り、密度が低く見えてしまう可能性があります(そうなった場合には2回目の手術を検討する必要があるかもしれません)。AGA薬はこれまで度々言及している通り、生え際にはあまり効果的ではありませんが、頭頂部には効果が出てくれることが多いです。そのため、限りある資源(移植株)をなるべく有効に活用する為にも、頭頂部の手術を行った場合には特にAGA治療薬を継続して、既存毛は維持したいところです

【当院の頭頂部症例】

植毛前
植毛後 1年後 1,100株 ¥946,000
植毛前
植毛後 1年後 2,725株 ¥2,018,500
植毛前
植毛後 1年1ヶ月後 2,224株 ¥1,687,840

副作用と症状
 自毛植毛は安全で効果の高い治療法ですが、副作用がないわけではありません。その発生率や程度は、年齢、体質、持病、移植範囲や植毛回数によってかなり個人差が出てきます。以下の症状はどれも一時的なもので、時間の経過とともに、改善します。ときには、症状の緩和のためにお薬を内服していただく場合もあります。
副作用:<痛み、出血、吐き気、移植部位のかさぶたや赤み、額やまぶたの腫れ、かゆみ、しゃっくり等>
症状:<一時的な脱毛(ショックロス)、感染症・膿胞、しびれ、移植毛のくせ等>
※詳しくはコチラのページでご確認下さい。

まとめ

 頭頂部への植毛は難しいのかについてご紹介をさせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。頭頂部に限らず、植毛をする際に重要な事として、経験の豊富なクリニック(医師、看護師)を選ぶこと、医師との相談をしっかりと行う事、アフターフォローの確認をしておく事、期待できる効果を確認・認識しておく事です。その上で、ご自身の意思によって植毛治療を行なうようにしましょう。
 国内でも数少ないFUT植毛とFUE植毛の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、頭頂部は勿論、前頭部への植毛にも対応しています。FUEで少ない株数をポイントで移植する事も、FUTで比較的多くの移植する事も可能なので、頭頂部の薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック 
医師 中島 陽太(国際毛髪外科学会 正会員)