育毛剤について【医師監修】
育毛剤は、AGA・薄毛でお悩みの方や予防を考えていらっしゃる方にとっては、まず初めに考慮されるアプローチではないでしょうか。しかし、様々な育毛剤が存在しており、何を選べばよいのか、どれが効き目があるのか等、AGA・薄毛に悩んでいる方は迷ってしまう薄毛対策の1つでもあるかと思います。今回はそんな育毛剤についてご紹介させていただきますので、育毛剤を既にお使いの方、検討中の方、育毛剤を使うのに不安がある方は是非ご一読いただけたらと思います。
育毛剤とは?
育毛剤とは、名前のとおり髪の毛の成長(育成)をサポートするためのアイテムで、育毛剤は主に頭皮の環境を整えて抜け毛を減らすことが目的となっており、医薬品と医薬部外品があります。その効果は、AGAの原因に働きかけるものから、髪の毛や頭皮の健康を目指すものまで幅広く費用も様々です。
育毛剤の仕組み
育毛剤は抜け毛を抑えるために使うものと紹介させて頂きましたが、ではどの様なメカニズムでその効果が期待できるでしょうか。育毛剤は、配合される成分によってその効果は異なりますが、基本的には頭皮環境を改善したり、頭皮の血流を改善して栄養をより毛保細胞に送って活性化させて、髪の毛を健康に保つことが期待できます。例えば、現在日本でも医学的に効果が認められているミノキシジル外用薬は、頭皮の血管を拡張させて血液の流れを改善することで、毛包に栄養や酸素を効果的に供給して髪の成長を促進させて毛髪の健康を維持するという効果が期待できます。但し、個人によって効果には差があり、育毛剤を使用したからといって、AGA・薄毛の体質自体が改善される訳では無いので、過度の期待は控えておくようにしましょう。
効果を実感できる期間の目安
育毛剤というのは、使い始めてすぐに効果を実感できるというものではなく、少なくとも育毛剤を使い始めてから6ヶ月以上は続ける必要がございます。髪の毛にはヘアサイクルといわれるものがあります。薄毛に悩む人は、髪の毛が休止期といわれる時期に入っていて、成長期に切り替わらないと髪の毛が生えてきません。このサイクルが切り替わるのには数か月かかると言われています。また髪の毛は1ヶ月に1cm伸びるので、半年は使い続けないと育毛剤の効果を実感できないでしょう。なお、育毛剤の使用をやめてしまうと、育毛剤を使う前の頭皮環境に戻ってしまいます。つまり、育毛剤によってこれまで維持できていた状態がリセットされてしまい、AGAが進行した状態(育毛剤を使っていなかった状態)になってしまうということです。
代表的な育毛剤
現在、様々な育毛剤がございますが、本記事では日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 」にて推奨されている代表的な育毛剤をご紹介させて頂きます。いずれも臨床試験を経てAGAによる薄毛に対する効果が認められたAGA治療薬となります。
効果には個人差がありますが、共通して言えるのは、使用をやめると維持されていた効果も失われ、元に戻ってしまうということです。AGA治療薬には副作用や使用上の注意などがございますので、医師から説明を受けるよう心掛けましょう。
ミノキシジル外用液
市販でも広く販売されているAGA治療薬で、リアップという商品が日本では代表的です。先のガイドラインでは、男性型脱毛症には5%、女性型脱毛症には1%のものが推奨されており、推奨度はA(行なうよう強く勧める)となっています。ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として使われてきましたが、体毛が濃くなる症状が見受けられたため、塗布される薬として改良されてAGA治療薬として使われるようになりました。
ミノキシジルは、血管拡張作用により毛乳頭細胞へより多くの栄養素や酸素を運んで、薄毛の進行を遅らせたり、抜け毛を減らす効果が期待できます。
フィナステリド内服
フィナステリドは、男性ホルモンのテストステロンがAGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)へと転換するのを阻害することによって、AGAによる薄毛の症状改善が期待できるAGA治療薬です。元々は前立腺肥大症の治療薬として使用されており、副作用として毛が濃くなることから、男性型脱毛症(AGA)治療薬として使用されるようになりました。 先のガイドラインにおいては、推奨度として、男性型脱毛症=A(行なうよう強く勧める)、女性型脱毛症=D(行なうべきではない)とされており、未成年や女性は適応外となります。処方には医師の診察が必要です。
効果は頭頂部に出やすく、生え際や前頭部に対する効果は限定的です。この薬は前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の値を下げる効果があるため、健診や人間ドックでPSAを測定する場合には必ず申告してください。
デュタステリド内服
デュタステリドは、AGA(男性型脱毛症)の原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の生成に必要な2種類の5α還元酵素を抑制することによって、AGAの改善が期待できるAGA治療薬です。こちらも元々は前立腺肥大症の治療薬として使用されておりましたが、副作用としての育毛効果が認められてAGA治療薬として認可されました。フィナステリド同様に、先のガイドラインにおいては、推奨度として、男性型脱毛症=A(行なうよう強く勧める)、女性型脱毛症=D(行なうべきではない)とされており、未成年や女性は適応外となっております。処方には医師の診察が必要です。
効果は頭頂部に出やすく、生え際や前頭部に対する効果は限定的です。こちらもフィナステリドと同様に、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の値を下げる効果があるため、健診や人間ドックでPSAを測定する場合には必ず申告してください。
育毛剤の選び方
育毛剤といっても、配合成分や期待できる効果によって様々な種類があります。特にAGAによる薄毛を改善したいという方は、ご紹介させて頂いた「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」を参考に医薬品であるAGA治療薬をご検討されると良いでしょう。AGA治療薬は医師の診察が必要なものもございますので、ご自身の症状に合わせたAGA治療薬を検討されるのであれば、まずAGA・薄毛治療専門の医師に相談をされると良いかと思います。
また、育毛剤を選ぶ際は、その効果と共に費用も考慮しておく必要がございます。育毛剤は1度使ったからといって、永続的に効果を得るものではございません。育毛剤の効果は使用している間にのみ効果を発するものとなりますので、継続を前提に負担の無い価格帯で自身に適した育毛剤を選ぶようにしましょう。
育毛剤と植毛の違い
AGA・薄毛対策のひとつの選択肢として、髪を健康に保つ事を目的とした育毛剤がございますが、他の選択肢としては、薄毛の部分に自身の髪の毛を移植する植毛(自毛植毛)がございます。其々の違いをご紹介させて頂きます。
※ 本記事にある「植毛」は医学的に効果を認められている「自毛植毛」を指します。
費用
育毛剤
月におよそ数千円~1万円前後。継続する限りランニングコストとしてかかります。例)1万円/月 × 12ヶ月(1年) × 30年 =360万円。
植毛
1度の治療でおよそ数十万円~百数十万円。方法、希望本数等によって金額が変わります。追加の費用は発生いたしません。
効果
育毛剤
抜け毛を減らしたり、薄毛の進行を遅らせたりする効果が期待できます。効果を実感するまでにはおよそ6ヶ月~1年ほどかかり、効果を継続させるためには使用を継続する必要がございます。また使用を中止すると効果が消失します。
植毛
自身のAGAに強い髪の毛を採取して薄い部分に移植して自身の髪の毛を生やします。生え揃うまでに約1年ほどかかりますが、1度の手術で永続的な効果が期待できます。
管理
育毛剤
効果を持続させる為には継続使用が必要。やめてしまうと維持してきた育毛剤の効果は消失。髪の毛の管理自体は普段通りでよく、パーマや染髪、整髪料の使用は問題ありません。
植毛
移植毛定着後は自身の他の髪同様の取り扱いができ、洗髪やドライヤーなども可能で変わらない日常生活が送れます。パーマや染髪、整髪料の使用もできます。
その他
育毛剤
手術は伴わないAGA・薄毛対策。身体的負担が比較的軽い。髪の毛の維持が期待できます。
植毛
手術を伴うAGA・薄毛治療。必ず採取痕(FUT法:1本の細い線状痕、FUE法:米粒大の小さな傷が採取数と同じ数)が残ります。(※髪を伸ばすことで隠せます)移植毛は生え続ける事が期待できます。
育毛剤で効果がない場合は、植毛も選択肢のひとつ
薄毛が気になり出したら直ぐに植毛(自毛植毛)をと検討される方もいらっしゃるかと思いますが、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 」では、
フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して、他に手段がない状況において、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り、男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧め、女性型脱毛症には行ってもよいこととする。
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 - 日本皮膚科学会
とされております。
AGAによる薄毛でお悩みの方は、まずは育毛剤(AGA治療薬)をお試しいただいて、効果が実感できない場合は植毛(自毛植毛)をご検討されるとよろしいかと思います。なお、植毛をした場合においても、既存の毛髪を極力維持する為に育毛剤のご使用をお勧めしております。
まとめ
育毛剤は、抜け毛減らしたり薄毛の進行を遅らせるためのアイテムです。その効果には個人差がありますが、効果が出てくるには時間がかかります。使用し始めてすぐに薄毛の体質が劇的に改善されて髪の毛がフサフサになるということではないので、予めご留意ください。数多の育毛剤があり、どれを選んでよいのか迷ってしまいますが、特にAGAによる薄毛でお悩みの場合は、医学的に効果が認められているAGA治療薬をご検討されるとよろしいかと思います。
当院では、AGA治療薬から自毛植毛まで、AGA・薄毛治療を専門に取り扱っておりますので、AGAに対する育毛剤をご検討されている方は勿論、育毛剤の効果が感じられずに他の選択肢を探している方もお気軽にご相談下さい。専門の医師が無料でお話をお伺いさせて頂き、メリット・デメリット、副作用やリスクなどをお伝えさせていただいた上で、状況・ご希望に合わせたAGAの治療プランを一緒に考えます。
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太