薄毛治療について【医師監修】
現在、AGA(男性型脱毛症)による薄毛を改善する為の治療法は多岐にわたります。そのため、ご自身の症状やご希望に合った方法を選ぶ必要があり、迷われる方も多いのではないかと思います。
ここではそれぞれのAGAによる薄毛の治療に関する現状とその特徴についてご紹介させて頂きますので、薄毛治療のひとつの参考にして頂けますと幸いです。
専門医への相談
薄毛治療に関するお悩みやご相談がある場合は、まず薄毛治療に関する専門的な知識と経験を持つ専門医に相談することをオススメします。日本国内には、AGA・薄毛治療に特化したクリニックが多数存在し、個人の状態に合わせたアドバイスや治療法を提供しています。薄毛の治療を開始するのであれば、まずは薄毛の状態を診断して原因を把握してから、その原因に対して適切なアプローチを実施していく事が最適な治療といえます。
医薬品による治療
AGAによる薄毛の治療において、まず取り組みやすい治療法が医薬品による治療です。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においても、ミノキシジル(外用)、フィナステリド(内服)、デュタステリド(内服)が特に推奨されております。処方には医師の診察が必要なものもございますので、まずは専門の医師にご相談下さい。
内服薬による治療
内服薬は、日本でも広く使用されており、最も一般的なAGAによる薄毛への治療法と言えます。フィナステリドとデュタステリドが一般的に使用されています。これらの薬剤はどちらも、男性ホルモンのテストステロンがAGAの原因であるジヒドロテストステロン(DHT)へ転換するの助ける「5α還元酵素」という物質を阻害する作用があります。ややこしい書き方になってしまいますが、ようするに「DHTを作らないようにする薬」ということです。その結果、髪の毛が太く成長する成長期を延ばすことができ、髪の毛1本ずつが太くなることで薄毛の症状の改善が期待できます。
フィナステリドは5α還元酵素のⅡ型のみを阻害し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害する作用があるため、デュタステリドの方が効果が強いと言えます。ただし、毛根に分布する5α還元酵素の大部分はⅡ型ですので、Ⅱ型のみ阻害するフィナステリドでも十分効果が期待できます(だいたい80%がⅡ型で、20%くらいがⅠ型です)。また、デュタステリドの方が副作用も若干ですが強く出る可能性があること、また値段も高いことから、まずはフィナステリドから開始して効果不十分であればデュタステリドに変更する、というのも良いかもしれません。
なお、フィナステリド、デュタステリドはどちらも女性を対象にした臨床試験において効果が認められなかったことから、女性に対する適応はありません。これらAGA治療薬の処方には医師の診察が必要です。
外用薬による治療
外用薬も薄毛治療の一環として広く利用されています。ミノキシジル(外用)は、頭皮に直接塗布することで起きる血管拡張作用により、毛乳頭細胞へより多くの栄養素や酸素を運ぶために、男性型脱毛症(AGA)の症状だけでなく他の脱毛症にも効果が期待されており、女性の薄毛に対しても効果が期待できます。ミノキシジル外用液は男性用が5%、女性用は1~2%と、同じ成分でも男女で濃度が異なりますので、ご自身に合ったものを選ぶようご注意ください。なお、ミノキシジル(外用)は医師による診察がなくてもドラッグストアなどで購入することが出来ます。
いずれのAGA治療薬も効果には個人差がございます。また、効果は使用している間のみみられるもので、使い続けないと効果は持続しません。もし使用をやめた場合は3~6ヵ月後に効果が消えて、元の状態に戻ってしまいますのでご注意ください。
植毛手術
AGA治療薬による治療において効果が感じられない場合は、治療法の選択肢として植毛手術(自毛植毛)があります。「植毛とは?医師が詳しく解説」でも詳しく書かせて頂いておりますが、植毛術の種類としては、自毛植毛及び人工毛植毛があります。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においては、自毛植毛手術は、男性型脱毛症は推奨度B(行うよう勧める)、女性型脱毛症は推奨度C1(行ってもよい)となっており、人工毛植毛は推奨度D(行うべきではない)とされていますので、ご注意ください。
自毛植毛
自毛植毛は、薄毛が気になる部分に後頭部から採取した強い健康な髪の毛を移植する方法であり、自然な見た目や簡便な管理、長期的な効果等が期待されるAGA治療法のひとつです。植毛方法としては、大きくFUT法とFUE法の2つがあります。いずれの方法もメリット・デメリットがあり、状態やご希望に応じて使い分けることを当院では推奨しております。
FUT(Follicular Unit Transplantation)
広範囲の薄毛治療、例えば1,500~2,000株のドナー株を一度に移植したい場合には、FUTが向いています。生涯には最大で約5,000~7,000株の植毛が可能です。前頭部から頭頂部等への広範囲への移植でも充分なドナー株数がFUTなら確保できる可能性が高いので、進行していくAGAへの対応も期待できます。ドナーエリア(後頭部や側頭部)から帯状に頭皮の組織を切り取り、そこから毛包単位に手作業で切り分けてから植毛する方法で、FUSE(Follicular Unit Strip Excision)やFUSS(Follicular Unit Strip Surgery)などと呼ばれることもあります。細い線状の縫合痕が残りますが、周囲の髪の毛を伸ばす事で隠す事ができます。
FUE(Follicular Unit Extraction)
眉毛、ヒゲや傷痕、頭部などの比較的狭い範囲への移植など、どちらかと言えば少量のドナー株の植毛に向いています。生涯には最大で約2,000~3,000株程度の株数が目安となります。また、頭皮が硬くて可動性が少ない方や、以前のFUT縫合痕を修正したい場合にもFUEが適しています。ドナーエリア(後頭部や側頭部)の毛包を機械を使って1つずつくり抜いて移植株を作製し、移植する方法で、米粒大のくり抜き痕が採取した数の分残りますが、周囲の髪の毛を伸ばす事で隠す事ができます。
自毛植毛手術は、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においては、
フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して、他に手段がない状況において、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り、男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧め、女性型脱毛症には行ってもよいこととする。しかし、日本国内で人工毛植毛術を施行することに医療法上の問題はないが、有害事象の発生を看過できないため、安全性に関する高い水準の根拠が得られるまでは、原則として人工毛植毛術を行うべきではない。
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版 ー 日本皮膚科学会
とされており、自毛植毛は、男性型脱毛症においてはB(行うよう勧める)、女性型脱毛症においてはC1(行ってもよい)とその有効性が認められております。なお、自毛植毛は、様々なAGA治療法の中でも唯一、メンテナンスや補修・継続購入等のランニングコストがかからず、副作用も殆ど無く、1度の手術で永続的な効果を期待できるAGA治療法です。また、自毛植毛はチーム医療となる為、医師の経験やノウハウは勿論重要ですが、看護師の経験やノウハウも大変重要となりますので、治療する医療機関を選定の際は、費用のみならず、こうした経験やノウハウの有無、実績なども考慮しておきましょう。
※ 自毛植毛についての詳細は、「自毛植毛とは」を参照ください
LED および低出力レーザー照射
LED および低出力レーザー照射によって、頭皮の血行を促進し、毛包の活性化や毛髪の成長を促進させてAGAによる薄毛の進行を抑制し、毛髪の密度や質を改善する等の効果が期待されています。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においては、B(行うよう勧める)となっており、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)などの脱毛症に対して効果が期待される治療法ですが、適切な機材を用いて正しい用法に従って運用される必要があります。
その他
アデノシンの外用、かつらの着用、成長因子導入および細胞移植療法、など様々なAGAの治療法がございます。詳細は日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」にてご確認を頂けますようお願いいたします(ネットで公開されています)。
治療の費用と注意点
AGAによる薄毛の治療は保険適応外の自由診療となる為、全額自己負担の治療となります。また、薄毛治療の費用は、治療法によって大きく異なります。いずれの薄毛治療においても、その効果は個々の体質や薄毛の原因などによって異なります。治療法によって副作用やリスク、メリットやデメリットがございますので、医師に相談の上、必ずそれらの説明を充分受けて理解・納得した上で治療を開始するよう心掛けてください。
まとめ
薄毛治療は、多様な治療法があり、ご自身にとってどの治療法が最適なのかを自己判断する事は困難です。そのため、薄毛治療の専門的な知識や経験を持った専門医による診断を受けた上で、医師と共にご希望やご予算に応じて治療法を選択していくことが望ましいと考えます。
AGA治療・自毛植毛の専門院として長年(1998年開院)の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、医師による無料カウンセリングを通じて、個人別のお悩みに寄り添って一緒に薄毛治療プランを考えております。治療法の効果や有効性だけでなく、リスクや副作用、メリット・デメリットも丁寧に分かり易くご説明しております。カウンセリング時に治療の有無をお決め頂く必要はなく、ご自身でご理解・納得されたうえで、治療法をお選びいただけますようご案内いたしております。カウンセリングは他の方とお会いにならないよう個室にて完全予約制で行っておりますので、薄毛でお悩みの方はお気軽にご相談下さい。
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太