髪の毛が抜ける時期【医師監修】

 髪の毛が抜けるという現象は、日常生活で多くの人が経験することで、健康な頭皮の人でも、1日におよそ50本から100本程度の髪の毛が自然に抜け落ちるのは正常なことです。これは、季節によって抜け毛が起きるというよりも、毛周期といわれる髪の毛が生え変わる周期における「休止期」がその主な要因です。しかし、正常な抜け毛の量を超えて抜け毛が続くと、薄毛の状態になってしまいます。本コラムでは、髪の毛が抜ける時期や、その原因、過度の抜け毛に対する対策・治療などについてもご紹介します。まずは髪の毛の成長サイクルについてみていきましょう。

髪の毛の成長サイクル

 髪の毛は常に一定のサイクルを繰り返しています。これを毛周期(ヘアサイクル)といい、このサイクルは大きく分けて3つの段階に分かれます。毛周期について興味のある方は、「毛周期(ヘアサイクル)とは」で詳しくご紹介させて頂いておりますので、併せてご参照ください。

成長期(アナゲン期)

 成長期は、毛包内で毛母細胞が活発に分裂を繰り返して、新しい毛髪が作られてる期間です。頭髪の約85〜90%がこの成長期にあたり、この段階では、毛包(毛根を包む組織)が深く皮膚に埋まっています。成長期の長さは部位によって異なり、眉毛やまつ毛、体毛は数ヶ月程度ですが、頭髪の場合は3〜7年と長期となります。成長期が長いほど、毛は太く長く成長する傾向があります。

退行期(カタゲン期)

 退行期は、毛髪の成長が停止して毛包が収縮を始める期間で、通常2〜3週間続きます。成長期を終えた毛髪が退行期に入ると、毛母細胞の活動が低下し、毛髪の成長が止まります。毛包の底が縮小し、毛髪が頭皮から徐々に離れます。退行期中、毛包は新たな毛髪を生成するための準備を始めるため、次の毛周期の休止期へと移行します。この時期の毛髪は、毛根が固くなって頭皮にしっかりと固定されますが、成長はしていません。退行期の毛髪は全体の約1〜2%を占めます。この段階が終わると、毛髪は休止期に入り、最終的には抜け落ちます。退行期は毛髪の更新プロセスにおいて成長期から休止期を繋ぐ重要な役割を担っています。

休止期(テロゲン期)

 毛周期の休止期は、毛髪の成長が完全に停止し、毛包が新しい毛髪の成長を準備する期間です。1日に約50〜100本の毛髪が自然に抜けるのは、この休止期の影響になります。つまり、基本的には「髪の毛が抜ける時期=休止期」となります。この期間は通常3〜4ヶ月続きます。休止期に入ると、毛髪は成長を完全に止め、毛包は活動を休止します。この段階では、毛髪は頭皮にしっかりと固定されていますが、毛根は次第に緩み、最終的には抜け落ちます。休止期の毛髪は全体の約10〜15%を占めます。休止期の終わりには、毛包が再び活性化し、新しい毛髪の成長が始まります。この新しい成長は、旧い毛髪を押し出し、結果として毛髪が自然に抜けることになります。このプロセスは、新しい毛髪が健康に育つための自然なサイクルの一部です。休止期は、毛髪の生え変わりを管理し、頭髪の健康を維持するために重要な役割を果たします。

毛周期の異常

 通常、毛周期における休止期が、髪の毛が抜ける時期ですが、その毛周期に異常が起きると、脱毛症やその他の毛髪トラブルの原因となり、過度な抜け毛へと繋がってしまう可能性があります。代表的な毛周期の異常は以下の通りです。

男性型脱毛症(AGA)

 男性型脱毛症(AGA)は、遺伝とホルモンの影響による毛周期の異常です。男性ホルモンであるテストステロンが、5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素によってジヒドロテストステロン(以下DHT)という物質に変換されます。このDHTが毛包のアンドロゲン受容体に作用して毛周期を早めてしまいます。つまり、髪の毛が成長して太くなる前に抜けてまた産毛に生え変わるサイクルへと変えてしまいます。その結果、毛髪が細く短くなっていって、薄毛状態になっていき、最終的には無毛の状態になります。詳しくは「AGA(男性型脱毛症)とは?原因と予防、対策・治療法を紹介【医師監修】」で紹介していますので、興味ある方はご参照下さい。

休止期脱毛(テロゲン脱毛症)

 休止期脱毛は、急なストレスや重大な病気、栄養不足などにより、成長期の毛髪が一斉に休止期に移行する現象で、大量の毛髪が短期間で抜け落ちていきます。通常、原因が取り除かれると、再び毛髪は成長期に戻りますが、回復には数ヶ月かかることがあります。

円形脱毛症

 円形脱毛症は、自己免疫反応による毛周期の異常です。免疫システムが誤って毛母細胞を攻撃することで、毛髪が急速に抜け落ち、円形の脱毛斑が形成されます。この状態は、ストレスや遺伝的要因が関与すると考えられています。詳しくは「円形脱毛症とは? 原因や治療について紹介【医師監修】」で紹介していますので、興味ある方はご参照下さい。

その他

 フケなどの頭皮のトラブル、脂漏性皮膚炎や頭皮の乾燥、熱や化学薬品を使用した処理も髪にダメージを与える原因となりえます。また、帽子やヘルメット、かつらの長時間着用、整髪料の長時間使用、過度の牽引を伴うヘアスタイルなども頭皮や毛根への負担を増加させ、抜け毛に繋がる可能性があります。

乱れた毛周期の治療法

 抜け毛が増えてきた、薄毛になってきたと感じた際は、下記のような対策・治療法があります。これらを効果的に進める為にも、ご自身の状態を医学的に診断して、その結果に基いてご希望を考慮しながら対策・治療を行なっていく事をおすすめいたします。

医師の診断

 実際に抜け毛が気になりだして来たら、まず専門の医師の診察を受ける事をお勧めします。AGA以外の原因でも薄毛が起こることがあるので、自身の状態を診断してもらいましょう。治療が必要な状態だと診断された際は、医師の処方が必要なAGA治療薬や植毛などの医学的な治療も含めた選択肢からご自身の症状や希望等に合わせた治療法を選ぶようにしましょう。

医薬品

 内服薬や外用薬など抜け毛の治療には様々な薬があり、処方には医師の診察が必要なものもあります。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においては、内服薬ではフィナステリド、デュタステリド、外用薬ではミノキシジルが、A(行うよう強く勧める)として推奨されています。(※ただし、女性は内服薬:フィナステリド、デュタステリドの使用は控えるべきで、外用薬:ミノキシジルのみとなります。そのミノキシジルも男性用と女性用では濃度に違いがあるので使用の際はご注意ください。)

植毛(自毛植毛)

 自身のAGAの影響を受けにくい髪の毛を毛包ごと薄毛が気になる部分に移植する医療技術です。定期的なメンテナンスの必要もなく、毛包ごと移植した髪の毛は他の髪の毛と同様に伸びてきます。カラーリング、パーマ、洗髪、散髪、整髪料による整髪なども特に気にすることもなく行なう事が出来ます。
 ※詳しくは紀尾井町クリニック公式サイトの「自毛植毛とは」や「植毛とは?医師が詳しく解説」でもご紹介しておりますので興味のある方は併せてご参照ください。

その他

 かつら、低出力レーザー治療、成長因子導入および細胞移植療法など、上記以外にも様々な対策・治療法があります。専門の医師に相談をして、治療法のメリット・デメリット、リスクや副作用等を詳細に説明してもらった上で、ご自身の症状やご予算、ご希望等を踏まえた上で治療法の選択をしていきましょう。

まとめ

 髪の毛が抜ける時期について、季節要因も影響する可能性はありますが、基本的には毛周期(ヘアサイクル)の休止期に抜けており、健康な人でも1日あたり50~100本程度抜けています。しかし、AGAの影響などで毛周期に異常が発生すると、正常な抜け毛の範囲から逸脱して抜け毛が増えてきて、その状態が続くと薄毛へと繋がってしまいます。毛周期が乱れてきたと感じたら、まずは専門の医師に相談をするところから始めて頂く事をお勧めします。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックは、AGA治療薬はもちろん、国内でも数少ないFUT植毛とFUE植毛の両方に対応できる薄毛治療専門のクリニックです。経験豊富な医師が直接相談を承った上で、お悩みに寄り添って一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、抜け毛が増えてきたと感じる方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太