頭皮の湿疹と薄毛の関係は?原因や予防、対策・治療法を紹介【医師監修】

 頭皮の湿疹(しっしん)は、頭皮に発生する炎症性の皮膚疾患です。かゆみや赤み、フケ、発疹などの症状が現れ、場合によっては痛みや出血を伴うこともあります。湿疹の種類や原因は様々であり、適切な治療や予防が重要となります。本コラムでは、頭皮の湿疹の原因や予防、対策、治療法をご紹介します。

頭皮の湿疹と薄毛の関係

 頭皮の湿疹と薄毛には関係がある場合があります。以下にその関係性について主なものを見ていきましょう。

炎症による毛根のダメージ

 頭皮の湿疹が原因で炎症が発生すると、毛根がダメージを受けることがあります。炎症が続くと毛根の健康が損なわれ、髪の成長サイクルが乱れてしまい、薄毛が進行する可能性があります。慢性的な炎症は最終的には毛包自体を壊してしまい、一切の発毛が出来ない状態に繋がる可能性もあります。炎症の原因としては、接触皮膚炎(アレルギー物質に接触することによる皮膚炎で、原因としてはヘアカラーやパーマ液が多いです)、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などです。

毛乳頭への血流障害

 炎症が起こると、頭皮の血管が拡張し、血液の流れが乱れます。これにより、毛乳頭への酸素や栄養素の供給が不十分になり、毛髪の成長が阻害されます。

毛母細胞の損傷

 炎症によって毛母細胞が直接ダメージを受けると、細胞分裂が正常に行われなくなります。これにより、毛髪の成長速度が低下し、毛髪が細くなる、または成長が止まることがあります。

毛包の破壊

 長期的な炎症は毛包自体を破壊することがあります。毛包が破壊されると、その部分から新しい毛髪が生えなくなります。これが薄毛や脱毛の原因となります。

痒みによる掻きむしり

 様々な原因で湿疹が起こり、頭皮がかゆくなると、掻きむしることによって毛根が傷つき、脱毛が酷くなってしまいます。頻繁に頭皮を掻くことで、毛髪が引っ張られ、抜けやすくなったり(牽引性脱毛)、頭皮へのダメージによって髪が成長し難い環境になってしまう可能性があります。

皮脂の過剰分泌

 皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が詰まって炎症が生じることがあります(脂漏性皮膚炎)。これにより、毛根が正常に機能しなくなり、薄毛の原因となります。また、皮脂がたまってしまうと、炎症や痒み、真菌(カビ)の増殖などの他の要因を引き起こす可能性があります。

真菌や細菌感染

 菌の感染による頭皮の白癬(はくせん)や毛包炎などの感染症は、毛根に直接的なダメージを与えることがあります。感染によって、炎症や毛穴のつまり、痒みや免疫反応の過剰反応などを引き起こす事があり、脱毛斑が形成されることがあります。毛根に直接感染した場合は、毛根を破壊してしまうこともあります。

栄養不足

 頭皮の湿疹が栄養不足によって引き起こされる場合、同時に髪の健康も損なわれ、薄毛が進行することがあります。特にタンパク質、鉄分やビタミンの不足は、髪の成長に影響を与えます。

頭皮の湿疹の原因

 頭皮の湿疹の主な原因は以下の通りです。

アレルギー反応

 ヘアカラー、パーマ液、シャンプーやコンディショナー、ヘアスプレーや育毛剤などのヘアケア製品に含まれる成分がアレルギー反応を引き起こすことがあります。これ等に関係した皮膚疾患としては、接触皮膚炎があります。接触皮膚炎が起きた場合には速やかに原因となったものを中止する必要があります。

乾燥

 乾燥した環境や過度な洗髪は、頭皮の油分を奪い、乾燥を引き起こします。乾燥した頭皮は敏感になりやすく、湿疹が発生しやすくなります。これ等に関係した皮膚疾患としては、乾燥性皮膚炎があり、乾燥が症状を悪化させてしまうものでは、アトピー性皮膚炎やシェーグレン症候群などがあります。

皮脂の過剰分泌

 ストレスやホルモンバランスの乱れにより皮脂の分泌が過剰になると、毛穴が詰まりやすくなり、炎症が起きやすくなります。これが湿疹の一因となります。これ等に関係した皮膚疾患としては、脂漏性皮膚炎、毛包炎(毛嚢炎)、頭皮のニキビなどがあります。

菌感染

 マラセチア属真菌やバクテリアなどの微生物が頭皮に繁殖することで湿疹が発生することがあります。これらの菌は通常、皮膚の表面に存在しますが、条件が整うと異常増殖し、炎症を引き起こします。これ等に関係した皮膚疾患としては、真菌感染症(頭部白癬)、カンジダ症、脂漏性皮膚炎、毛包炎(毛嚢炎)などがあります。

その他の原因

 自己免疫疾患(乾癬、円形脱毛症など)や遺伝的要因(アトピー性皮膚炎など)、栄養不足なども頭皮の湿疹の原因となることがあります。

頭皮の湿疹の予防

 頭皮の湿疹を予防するためには、日常生活において以下の点に注意することが重要です。

適切なヘアケア製品の選択

 シャンプーやコンディショナーは、自分の頭皮のタイプに合ったものを選ぶことが大切です。また、ヘアカラーなどが原因で接触皮膚炎を起こした場合にはヘアカラーやパーマ液などの使用は避けるか、なるべく頻度を減らすようにしましょう。

適度な洗髪

 過度な洗髪は頭皮の油分を奪い、乾燥を招く原因となります。逆に、洗髪を怠ると分泌された皮脂が過剰に蓄積され、毛穴が詰まりやすくなります。適度な頻度で洗髪を行い、頭皮を清潔に保ちましょう。また、洗髪の際は爪を立てたり必要以上に髪を引っ張ったりなどを避けて洗うようにしましょう。

健康的な食事習慣

 バランスの取れた食事は、頭皮の健康を維持するために重要です。特にビタミンやミネラルを豊富に含む食事は、皮膚の健康に寄与します。

ストレス管理

 ストレスはホルモンバランスを崩し、皮脂の過剰分泌を引き起こすことがあります。日常生活でのストレスを軽減するために、リラクゼーション法や趣味、運動など、ご自身に合ったストレス解消法を取り入れるようにしましょう。

良質な睡眠

 十分な睡眠は、皮膚の修復や再生を助けます。規則正しい睡眠習慣を確立し、質の良い睡眠を確保することが重要です。なお、髪の毛にとっても重要で、夜22時~2時までの時間は、成長ホルモンが多く分泌されるため、この時間にはしっかりと就寝できるよう心掛けて頂きますと良いでしょう。

頭皮の湿疹の対策・治療法

  頭皮の湿疹が発生した場合、適切な治療を行うことが重要です。以下に主な治療法を紹介します。

医師の診断と治療

 頭皮の湿疹が続く場合や、自己治療で改善しない場合は、まず皮膚科医の診断を受けることが重要です。医師は湿疹の原因を特定し、適切な治療法を提案してくれます。必要があれば、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬、抗菌薬などによる治療を行います。

原因物質の除去

 接触皮膚炎で原因となる物質が分かっているのであれば、その原因物質の使用を控えることが重要です。

抗ヒスタミン薬内服

 かゆみが強い場合にはかゆみを抑える抗ヒスタミン薬が処方されることがあります。

シャンプー療法

 医師の指導のもと、ステロイドが含有された治療用シャンプーを使用することがあります。これには抗炎症作用を持つ成分が含まれており、湿疹の症状を緩和するのに役立ちます。特に炎症が広範囲に及ぶ場合に選択されることがあります。なお、長期使用に伴う副作用もありますので、必ず医師のアドバイスに沿って使用する必要があります。

適切なヘアケア

 湿疹の治療中は、頭皮に負担をかけないように注意することが重要です。洗髪時には刺激の少ないシャンプーを使用して、優しくマッサージするようにし、強くこすらないようにしましょう。また、洗髪後は頭皮をしっかりと乾かし、湿った状態を避けるようにします。

予後

 脂漏性皮膚炎はよくなったり悪くなったりを繰り返し、慢性に経過することが多いですが、通常、湿疹・皮膚炎に伴う脱毛は一過性で、炎症が消退すれば脱毛も改善します。ただしあまりに長期間炎症を放置してしまうと生えなくなってしまうこともありますので、長期間治らない場合には皮膚科への受診をしてください。

まとめ

 頭皮の湿疹は多くの人々にとって悩みの種となる皮膚疾患ですが、適切な予防策と治療法を実践することで改善が期待できます。日常生活において頭皮の健康を保つための工夫を凝らし、問題が発生した場合は速やかに医師の診断を受けることが重要です。さらに、もし湿疹による薄毛が治らない場合は、専門の医師に相談の上、薄毛治療を開始していきましょう。なお、当院は自由診療のクリニックですので、保険診療は行っておりません。そのため、頭皮湿疹の治療は行うことはできません。今回の記事は、正しい情報にリーチできずに困っていらっしゃる方への情報提供という意味合いで書かせていただいきました。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックは、AGA治療薬はもちろん、国内でも数少ないFUT植毛とFUE植毛の両方に対応できるクリニックです。経験豊富な医師が直接相談を承った上で、お悩みに寄り添って一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、抜け毛が増えてきたと感じる方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太